お見合い結婚狂騒曲
「山本さん、彼女はフィアンセの赤尾真央さん。これからちょくちょく出入りすると思うから、指紋認証の手続きをお願いします」

「ああ、この方が、お美しい方ですね」

ーーお美しい……なんてイイ人なんだ。

「赤尾様、お初にお目にかかります。当マンションのコンシェルジュ、山本です。以後お見知り置きを。早速ですが手続き致します。こちらへ」

と、連れて行かれたのはエレベーターホール。四基あるようだ。その一番奥のエレベーター前に立たされる。そして、山本さんに言われるがまま手続きを済ませたが……。

でも、なぜ? と思っていると、葛城圭介は私を誘いエレベーターに乗り込む。

「今後、君がここに来る機会は多くなるだろう。それに、とうぶん新居はここだろうからね」

エレベーターが止まったのは最上階の五十八階だった。

「ーーあのぉ、さっきから色々突っ込みどころ満載なのですが……」

ドアが開くと……そこは玄関だった。

「この階は僕の部屋しかない。今乗ってきたのがこの階への直通エレベーターだ。指紋認証を登録した者しか動かせない。覚えておいてくれ」

開いた口が塞がらない。どこから突っ込んだら良いのやら……。
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