お見合い結婚狂騒曲

「いや、もう、さっぱり意味が分からないんですけど……」

本当に君は馬鹿だ、と言うように深い溜息を付き、葛城圭介が説明を始める。

「担当医が、一人の家に帰すわけには行かないと退院を阻止しようとした。なぜなら頭を怪我したからだと言う。二十四時間経過観察する必要があるらしい。だから言ったんだ。婚約者が一晩中付いてくれるから、何かあったらすぐ病院に戻ると」

婚約者のところで葛城圭介が私を指差す。

「で、こうやって退院が許されたわけだ。僕としても、万が一のことがあったらシャレにならないから、君にいてもらうことにした」

ーーもらうことにしたぁ！　何という身勝手な理由だ！

「だったら、別に私じゃなくても、秘書の方でもいいじゃないですか！」
「奴は新婚だ。流石の僕も馬に蹴られたくないんでね、その意見は却下だ」
「じゃあ、真斗さん、彼なら」

フルフルと首を横に振り葛城圭介が言う。

「君は知らないんだね。彼の睡眠が子供並みに深いことを。奴は一度寝たら朝まで絶対に起きない。その間に僕が苦しみ死んでしまっても、君はいいと言うのか？」