お見合い結婚狂騒曲
〈やっぱりな、でも、君のことだから釣られてOKと言うかも、と微かな希望を抱いたのだが……〉

それって、ノリで結婚を承諾する、と思っていたってこと……電話を持つ手がワナワナと震える。

「こんな時も、私を馬鹿にしているのですか!」

怒りと共に涙が込み上げてくる。

〈いや、違う。怒ったか? 悪かった。プロポーズは改めてする。だから機嫌を直して、今日は一緒に節分祭に参加をして欲しい〉

いつになく弱々しい声が耳元で懇願する。と同時に涙が引っ込む。

〈他の者たちはどうでもいいが、祖父様が君に会いたがっている〉

ズルイ……葛城圭介がお祖父様を大切に思っていることは知っている。祖父母という言葉に弱い私は、そう言われてしまうと「行きます」と言うしかないじゃないか。

〈ありがとう。君ならそう言ってくれると思った〉

打って変わって明るい声に、もしかしたら、騙された? と思っていると……。

〈予定の時間よりも早いが、一時間後に迎えに行く〉

私の返事も聞かず、それだけ言うと通話は途切れた。

電話を握り締め、「あの男ぉ、会ったらタダでは済まさん!」と呪いの言葉を呟き、携帯の時計を見る。

十四時五分。節分祭は十八時からと聞いている。四時間も……何をするのだ?
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