お見合い結婚狂騒曲
不思議に思っていると、「君とは何度も手を繋いでいるからね」と宣う。

それだけで分かってしまうとは……いったい、何人の女に指輪を贈ったのやら、と思っていると、思いが顔に現れていたようだ。

「誤解するな。指輪を贈ったのは君だけだ。祖母の指とサイズが同じだったのだ」

憮然と言いながらも、指輪の上から私の指を優しくひと撫でする。
その感触に、ゾクッと肌が粟立つ。

「君の反応はいちいち新鮮で面白い」
「おっ面白がらないで下さい!」

全く、心臓に悪い、と彼の手から我が手を奪い返す。

それにしても……と指輪を見る。何カラットあるのだろう。見ているだけで気も指も重い。

それにも増して、横で何食わぬ顔をしたこの人の比重が……私の中でどんどん重くなっていく。

やっぱり、私はこの人が……好きみたいだ。

自分の気持ちが再確認できたところで、車は閑静な住宅地に入る。
そこは、一軒一軒の敷地が広く、豪邸ばかりが建ち並ぶ区域だった。

その中でも一際目立つ豪華な門の前で車が停まる。
門には監視カメラが付いているのだろう、何もせずともひとりでに開く。

「ここは祖父様の現、住まいだ」

ということは、他にもあるということだろう。もう、大抵のことでは驚かない。フン、矢でも鉄砲でも持って来い! とちょっとやさぐれる。
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