お見合い結婚狂騒曲
「君が着物でなかったら、このままソファに押し倒すのだが」

抱き合ったまま葛城圭介がシレッと宣う。
ポーッとキスの余韻に酔いしれながらも、イヤイヤそれは幾ら何でも、と思いながら……。

「もしかして、地球上に私と二人きりになったら、私を抱けるとか?」

その場を誤魔化すように、ふざけて言ってみると……。

「二人きりにならなくても抱ける。何なら、今すぐ、僕の部屋に行こう。この邸にも僕の部屋はあるからね」

思わぬ逆襲に逢い墓穴を掘る。

「ちょっとタイムです。改めて確認しますが、貴方、私が好きなんですか?」

キスをしておいて何だが……。

「ああ、いつの間にか好きになっていた」

彼の熱い眼差しが私を見つめる。

「会えば会うほど君をもっと知りたくなり、君と共に過ごした日は君を帰したくない、と思うようになっていた」

真摯な瞳が、真実だ、と言う。

「君は……僕を好きになってくれた」

だから、ついさっき悟った思い。それをおずおずと口に出す。

「どうやら私も、貴方のことが好きみたいです」
「二人の気持ちが重なったな」

コツンと彼が額と額をくっ付ける。

「ーーで、さっきの人は誰ですか?」

彼がハーッと機嫌の悪い溜息を吐く。
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