お見合い結婚狂騒曲
「君はムードを壊す名人だな」
「はぁ、すみません」

葛城圭介は私の手を引きソファに腰を下ろす。

「あれは、僕の実父だ」

横並びに座ったのは顔を見られないようにするため?

「現在、父母と呼んでいるのは伯父と伯母だ」

淡々とした声が言う。

「実母は僕の命と引き換えに亡くなった。実父は実母を心から愛していた。だから、そのショックが大きかったのだろう、僕を憎み、育児を放棄し、ナニーに預けっぱなしにした」

彼の話は壮絶だった。

「僕も幼かったからあまり覚えていないが……僕は世話係だったナニーに、泣くな、笑うな、と言われ育ったらしい」

異変を感じたのは、お祖父様と圭一さんだったらしい。

「僕に喜怒哀楽が欠けている、と感じた二人はナニーを調べた。そして、虐待を知った。体じゃなく心のね。結果、ナニーには法的な処罰が下され、実父は葛城家から縁を切られ、僕は伯父夫婦の子供になった」

彼の視線がどこを見ているのか分からない。でも……その瞳が見た過去は辛過ぎる現実だったに違いない。

思わず、繋いでいた手に手を重ねる。
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