お見合い結婚狂騒曲
約束通り、六時に迎えの車が来た。
今回もベンツ。もう驚きはない。ちなみに色は濃紺。

運転手がドアを開け、乗車するように促すが、私は拒否の態度を示す。
見ず知らずの車に乗りたくない。

「お話は、そこのメロディーというカフェでお聞きします」

車中に居るであろう、瑠璃嬢に聞こえるように言う。ささやかな抵抗だ。

困った顔をする運転手に、申し訳なさが少しだけ芽生え、「すみません」と小声で謝っていると、パタンとドアが開く音がし、車体の向こうから声が聞こえた。

「分かったわ。行きましょう」

現われ出でたるは……バービー人形?

「瑠璃お嬢様、ですが……」

運転手がモゴモゴ反対の意を唱える。

二人のやり取りをボーッと見ながら思う。真斗さんが言っていた通りだ。滅茶苦茶美人。これで十六歳なら、この先、どうなるんだ?

ーー公香、彼女と闘うなど無理です。一生負けでいいです、と全面敗訴を訴える。

「大丈夫、貴方はここで待機していて」

どうやら運転手を説き伏せたようだ。

「そこね」と瑠璃嬢の視線がメロディーの看板を見る。
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