お見合い結婚狂騒曲
「貴女みたいな人、圭介さんが真剣になるはずないわ。きっと、私を諦めさせるために雇ったか、頼んだかでしょう」

鋭い! 侮り難し、十六歳。

「二十八回だったかしら、お見合いの回数」

エッと目を見開く。

「あら、普通調べるでしょう、ライバルのことは? でも……ライバルにもないわね」

片唇がクッと上がる。
ーー愚弄されているのは私の方だ。悔しいが全部本当のことだ。言い返せない。

「ーーえっと、お待たせしました」

緊迫した空気を微妙に感じたのだろう、ボーイ君が遠慮がちに声を掛け、注文の品を置く。

「ありがとう」といつものように礼を述べると、ボーイ君は強張った笑みを浮かべその場を離れる。

沈黙の中、紅茶を一口飲み、意外に美味しかったのか、瑠璃嬢の顔が僅かに緩む。

「ーーねぇ、貴女に何があるのかしら?」

エッ? と彼女を見る。

「地位も名誉もお金も……若さもない。おまけに容姿も……普通」

ーー彼女の言う通りだ。でも、良かった、容姿だけでも普通と思ってもらえて。だから、思わず「ありがとう」の言葉が出る。
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