お見合い結婚狂騒曲
あら、ヤダ! この余裕はどこから来るの?
瑠璃嬢が怒れば怒るほど、私の感情は落ち着いていく。

もしかしたら、これが年の功というもの?
やっぱり現役女子高生と三十路前の女って、こういうところで年齢の差が出るのね、と苦笑していると、これが更に瑠璃嬢を怒らせてしまったようだ。

「なに笑ってるの! バカにしているの!」

スローモーションの映像を見ているようだった。
彼女の手がウォーターグラスに伸び、私に向かってその中身がブチまけられた。

アッ、と目を瞑った瞬間、誰かに抱き締められる。
一瞬の静寂。時が止まったようだった。

「ーー大丈夫か?」

静寂を破ったのはその声だ。
ゆっくりと顔を上げると葛城圭介が前髪を濡らし、私を覗き込んでいた。

「瑠璃君、真央に水を浴びせるとは、どういう了見だ!」

怒りの込もった声が詰問する。
ポタンと水滴が私の頬に落ちる。

アッと我に返り、お絞りを手にすると葛城圭介の前髪を拭く。

「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、君は……大丈夫そうだな。良かった」
「なによ! 見せつけないで!」

瑠璃嬢が叫ぶ。

「真央ですって? 私の事はいつも君付けなのに……こんなオバさんのどこがいいのよ!」

ポロポロ涙を零し、声を上げ泣き出す。
オバさん、オバさんって……地味に傷付く。
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