お見合い結婚狂騒曲
コントのような会話を交わしながら、エレベーターで七階に上がり、自室に葛城圭介を通す。

彼は部屋を見回すと、開口一番「コンパクトな部屋だな」と言った。

「一人暮らしには、丁度いい広さです!」

どうせ、お宅は御殿のようなお屋敷なんでしょうよ、とは思うものの怒る気がしないのは……彼に対する免疫が付いたのか? それも怖い話だ。

「ーーまぁ、そうかもしれないな」

葛城圭介は悪びれた様子も見せず、ネクタイを緩めながら二人掛けのソファーに遠慮なく腰を下ろす。

あれっ? と今更だが思う。
この部屋に男性を通したのは、彼以外、祖父だけだ。男性用の着替えなどない。どうやって服を乾かすのだ?

ウーンと天井を見つめ、しばし考え、ポンと手を打ち、バタバタと浴室に向かい声を上げる。

「えっと、体、冷えたでしょう。お風呂を入れますから入って下さい。その間に、ワイシャツを乾燥機で乾かします」

この方法が一番ベストだ、と再び部屋に戻ると……。

「ーー君って……天然? はたまた小悪魔?」

呆れ眼が私を見る。

「連れ込んだだけでは飽き足らず、風呂に入れと言うのか? 実に愉快な奴だ」
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