本日、結婚いたしましたが、偽装です。
「あ、すみません。すぐにやり直します」
佐藤は少しハッとしたように目を開くと、さっと俺から書類を受け取った。
「まだ、プレゼンまでは時間はあるとしても、納品は今日の昼までだ。至急、やり直せ。……まだ、ぼうぜんとしてんのか?」
「えっ?」
……一週間もほぼまともなものを食べていなくて、その前に何かあったのかずっと悩んでいるような感じだった。
今日こそは大丈夫だろうかと通常の仕事を依頼したが、やはり昨日の今日で元気に働けというのも無理もある。
「……もうそろそろ、普段の仕事頼んでも大丈夫かと思ったんだが、まだ、昨日の今日じゃ無理か。佐藤、出来ないならまた他の奴に頼むぞ」
佐藤に期待していてミスばかりだから失望してそう言ったわけではない。
ただ佐藤も俺もお金をもらう“仕事”をしていて、ぼうぜんとした状態では取り返しのつかないことになりかねないと思ったからだ。
仕事は最初から最後まで完璧にしなければならない。
特にお金をもらっている以上は。
一週間ずっと何かに悩んでろくに食べずにぼうぜんとしながら仕事をしている佐藤を責めるわけではないが、これ以上ミスばかり増えて仕事が進まないのを避けるために『他の社員に頼む』と言ったのだ。
実際佐藤に頼んだ仕事が一向に進まない時は、他の社員に回していた。
単純作業ばかりでは色々といけないと思い頼んだのだが……。
「っ、大丈夫です。今度こそ、しっかりとやります。なので、最後までやらせて下さい。……お願いします」
佐藤は立ち上がると、俺に頭を下げた。
俺は、その佐藤のミスを指摘されて不貞腐れたり諦めない姿勢を見て悩む。
……佐藤が真剣にやっているのは、分かる。
だけど、真剣だけでも……。