本日、結婚いたしましたが、偽装です。
俺は、ついきつい口調で佐藤を急かす。
……本当は、もっと優しく言いたいのにどうして俺はいつも冷たい言い方しか出来ないんだ。
佐藤は、まだおどおどしていて、それから訳が分からないという表情をしている。
俺の焦りは更に激しくなる。
佐藤が今、『帰る』と言ったら送っていくつもりだった。
だけど、そういう事を言い出さない佐藤を見て俺はまだ、『佐藤が降りて、家に来てくれるかもしれない』と期待していた。
俺はとにかく、佐藤を一人にしたくはなかった。
……だからどうか、『降りてくれ』。
俺は半ば願うような気持ちで、口を開く。
「二度、同じことを言わせる気か?耳、聞こえているよな?」
不安と焦りを隠すためなのか、またもやきつい口調で言ってしまう。
俺は言ったその瞬間、後悔する。
佐藤が、会社の時みたいにどこか怯えたような素振りで俺からさっと目を逸らした。
……何やってんだよ、俺。
これじゃあ、無理矢理言う事を聞かせようとしているみたいじゃねえか……。
佐藤に嫌われたくないと思いながら、高圧的な態度でいたら嫌われても仕方がない。
どうして俺はいつだって、人に優しく接することが出来ないんだ……。
特に、優しくしたいと思っている人に対しては何故か冷たくしてしまう。
「は、はい…!今、降ります」
佐藤は、俺が自分の厄介な性格に悩んでいると俊敏な動きで助手席から降りた。
それからハンドバッグを持ってドアを閉めると、俺の一歩前に立った。
……降りたくない、と言われると思っていたのに。
俺は佐藤が車から降りたことに驚いて、そして強い喜びを感じた。
気付かないうちに、口角が上がっている。
だけどすぐに、恥ずかしいにやにや顔を佐藤に見られたくはないと思い唇を引き結ぶ。
……やっべ、思わずにやってしちまった。
密かに羞恥で鼓動を高鳴らせながら、後部座席からビジネスバッグを降ろし、車の施錠をする。