本日、結婚いたしましたが、偽装です。


「そうか…。そういえば、飯まだだったけど、佐藤、腹減ってねーんだよな?」


ふと、佐藤を家に連れて来た“本当の目的”を思い出してそう訊く。


そうだよ、佐藤を家に連れて来て浮かれていたけど、佐藤は確かそもそも食欲が無いって言ってたんだよ。


家に連れて来た理由は“泣いていた佐藤をただ放っておけなくて”という理由だったけれど……。


俺はそこで、ハッとする。


そういえば、連れて来た後のことは全く考えていなかった……。


疲れている佐藤をただ家に連れて来て、俺は何がしたかったんだ?


何をするつもりでいたんだ?


そもそも佐藤は食欲が無いくらい疲れていると言っているのに、遅くまで付き合わせて浮かれてちゃダメだろ。


佐藤が食欲があって空腹なら何か作ってということが出来るけど、それは無理だし……。


なら、なんで俺はまだ付き合ってもいない部下の女性を夜遅くに自分の家に連れて来ているんだ?


考えようでは、俺に下心があって連れて来られたんだと“警戒”されてもおかしくはない。


……まあ、ぶっちゃけそういう“下心”が完全に無いとも言い切れないけれども。


ダメだと分かっているのにどこか隠れた邪な気持ちに突き動かされてしまう自分が、ひどく恐ろしく感じる。


短い間に忙しなく考えていると、佐藤が口を開く。


「はい…空いて、」


俺は予想していた言葉が続くだろうと思った。


だけどその言葉は、最後まで続かなかった。


『ぐーきゅるるる』



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