本日、結婚いたしましたが、偽装です。


俺は、『佐藤に初めて飯を作る』と思うと不意に羞恥や緊張を感じて素っ気なく言ってから佐藤に背を向ける。


……恥ずかしいとか、今はなるべく思わないようにしよう。


失敗はできない。


よし。


俺は気持ちを切り替えて、二日間食べていない身体に優しい料理をいくつか頭に並べて出した食材を見て、考える。


「二日も食ってねえとなると、なるべく胃に負担かけないもんの方がいいよな…。おい、佐藤、おじやは好きか?」


佐藤に背を向けたまま突然訊くと、しばらく間があってから『えーと、はい、結構好きです』と返事が返ってきた。


その返事に一抹の安堵を覚えてから、俺はおじや作りに取りかかった。


体調が良くない時や今みたいに寒い季節にたまに食べたくなって、よく作っていた。


朝出る前に握って冷凍した白米を出し汁に投入しよく煮込む。


ご飯の柔らかさに個人な好みはあるかもしれないけれど、佐藤の事を考えて普段より柔らかめに作る。


卵を……と思ったけれどちょうど切れていて諦める。


刻んだネギを入れてしばらく煮込んで、火を止めて小皿に少しおじやを入れて味見をしてから優しいタッチで花が描かれた深めの陶器の皿に移す。


二人分作った俺は、佐藤の方におじやを多めに入れた。


木の小さな鍋敷きと木のスプーンをセットし、両手に持ってリビングに行き、佐藤の前に一つを置く。


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