本日、結婚いたしましたが、偽装です。


「あ、お、美味し…」


佐藤は、目を見開いてそう呟いた。


そして、満面の笑みを浮かべて俺を見た。


っ!


佐藤の久しぶりに見た笑顔に、息が苦しくなるほど心臓が暴れ狂う。


「課長、とても美味しいです」


お世辞でも無理して言っているわけではなく、心からそう言っているような感想を聞いた途端、一気に不安が消えた。


そして、安堵と高揚感が広がって自然に頬を緩んでいった。


……佐藤が食べてくれて、食べれるようで良かった。


美味しいなんて、二度も言ってくれて嬉しいな。


俺は、心の底からそう思いながら温かな気持ちで佐藤を見つめた。


今は微笑むことは、止められなかった。


佐藤はわずかに目を見開いて微笑む俺を見てから、またさっと目を逸らすとおじやを食べ始めた。


俺は、何も言わずに微かに頬を赤らめて食べる佐藤の姿をいつもより近い距離で時々盗み見しながら、色々と満たされた気分で食べた。



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