本日、結婚いたしましたが、偽装です。


食後、後片付けをしてからリビングのソファーに微妙な距離を置いて佐藤と座った。


俺の気持ちが、ぐらぐらと揺れていた。


もう食べ終わって、あとはもうすることはない。


佐藤を帰さないといけない。


そう分かっていても、どうにかして佐藤を引き留めたいとも思っている。


佐藤と居る時間を、引き延ばしたかった。


……まだ、もう少し、佐藤と居たい。


まだ、帰したくない。


だけど、引き留める理由が見つからない。


見つかるはずもない。


俺は、ただ、佐藤と居たいだけなのだから。


でも俺と佐藤は、上司と部下という関係だけで普段からあまり接してもいないのに、『ただ居たい』という理由だけで引き留めれるはずもない。


それに佐藤は、普段から俺のことを苦手だと思っているのだから、そんな俺の家に長くは居たくはないだろう。


それから一応おじやを完食しても疲れているのは疲れているだろうから、早く帰して休ませないといけないだろう。


俺は、本心をぐっと堪えておもむろに口を開いた。


「佐藤、もう帰るか?」



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