本日、結婚いたしましたが、偽装です。
俺はぐっと一緒にいたい気持ちを堪えて、口を開いた。
「そうか…。じゃあ、送ってく」
立ち上がり、自室に向かい入る。
短く吐息をついた。
……何期待してんだよ。ほんと。
自分になじるように言って、コートを着るとリビングに出た。
キャメルのダッフルを着た佐藤と玄関に行き、俺がドアを開ける。
冷たい風が俺と佐藤を包んだ。
佐藤は最後の最後まで礼儀正しく『お邪魔しました』と俺に頭を下げた。
そのたった些細な行動一つでも俺の心は佐藤に奪われて、また一瞬だけ『帰したくはない』と思ってしまった。
それから俺は佐藤ともう少し居たくて、佐藤は最寄りの駅まででいいと言ったけれど家まで送って行くと言った。
それに一緒に居たいのもあるけど、遅い時間で心配だったからのもあって。
佐藤の家まで着くまで、佐藤と俺は無言だった。
佐藤が俺の車に乗って、家に来て、手料理を食べて、家まで送るという夢のような展開にまだ鼓動を高鳴らせている俺はどこかそわそわして何も言えなかった。
佐藤との沈黙は、何故か苦ではなかった。
むしろ心地いいもので、こういう時間がずっと続けばいいとさえ思ってしまった。
だけど、佐藤が俺と同じようにそう思っているとは限らないとも思っていた。
俺と一緒に居たいなんて、思うはずないと……。
もう少しだけでいいから一緒に居たい、でもそんなことは言えないと葛藤しているうちにカーナビから目的地に着いたというアナウンスが流れた。