本日、結婚いたしましたが、偽装です。


……えっ、えっ、えっ⁈


今、『今度、是非』って……。


俺は自分の耳が、都合の良い耳をしていないか疑った。


でも、佐藤ははっきりと言った。


はっきりと、聴いた。


『また今度、是非』と。


『是非』と……!


うおおぉしゃあぁっ……!


ついさっきまで断れるかとビクビクしていた俺は、心の中で高く拳を上げてガッツポーズを決めた。


それに合わせて、頬が緩んでいく。


「…っしゃ。じゃあ、今度近いうちに、絶対に行こうな」


嬉しかった。


食事の誘いを受けてもらっただけでこんなにも嬉しくなるのも、初めてだった。


佐藤がすぐに俺の誘いを受けたことが、意外で信じられなかった。


佐藤の真面目な性格上、大人の対応として嫌だと思っていても断らなかったのかもしれなくても……。


嬉しいと思っても、すぐそういうことも考えてしまう。


「絶対、佐藤は断るって思ったけどな」


嫌いな上司の誘いを無理して受けていないか、ふとそう思った。


「えっ、そんな断りませんよ」


佐藤が軽く手を振って、否定した。


即座に否定してくれたことに、何故か深く安堵した。


……そうだよな、佐藤はきっと純粋に受けてくれたんだ。


きっと本当に行きたくなかったら、はっきりと断るはずだろう。


「肉だからか?」


それから少し浮き立っている俺は、口角を上げてそう言った。


……まぁ、それだけではないと分かっているけど。


「ち、違いますよ!そりゃあ、肉は大好きですけど、それにつられたわけじゃないです。…課長のこと、もっと知れる機会かもって思ったんです」



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