甘い魔法にかけられて
出張という名のイジメですか?
いつものように事務所へ入ると

小宮さんが既に出勤していた

「金曜日大丈夫だった?柚ちゃんノリノリだったけど」

心配そうな顔をする

・・・ノリノリ?
なんという失態・・・
怖い、怖すぎる

「な、なんとか」

記憶のない自分を
周りが知っているホラー


「でも帰る方向が矢野さんと同じで安心したわ~」

「そう・・・ですね」

モニターに貼られた付箋と
発注書を確認しながら

・・・もう二度とお酒は飲まない

強く心に誓った

それより困るのは

「柚ちゃ~ん、これどうするんだっけ?」

「柚ちゃ~ん、発注書の予備どこ?」

必ず頭に「柚ちゃ~ん」と付け
甘えたようなKYの声掛けに

頭を悩ませることになった

それが災いしたのか

社長から三連休前の出張を
KYと2人で行くようにと

仮払金を持たされた

・・・ありえないんですけど

・・・もしや…これはイジメですか?

複雑な気持ちのまま
電車とレンタカーの手配をする

日帰りということだけが
唯一の救いだけで

何一つ乗り気じゃない出張は

木曜日の早朝出発の
メーカー製造ライン見学

事務所のホワイトボードに

【矢野・上村】と抱き合わせで
予定を書かれ

モヤモヤする


・・・今夜は文具店へお邪魔しよう

週の始まりなのに
奥さんに聞いて欲しいことが多すぎて

お昼休みに連絡すると
二つ返事でOKを貰った
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