甘い魔法にかけられて

駅前で予約したレンタカーに乗り込むと
ＫＹの運転で工場へと車を走らせる

「雨、強くなってきたね」

「そうですね」

昼間なのにヘッドライトが自動点灯するほどの
大荒れの天気の中

２時間程で到着すると
カメラを片手に工場を案内してもらった

メモを取ることに必死になり
周りが見えていない私に

時折立ち止まっては
「ほら」
と補足説明を重ねてくれるＫＹ

伊達メガネと髪に隠れながら

工場内とＫＹの顔を半々で見ていることに気付く

・・・やだ、どうしたんだろ私

見学も終わり
お土産を頂くと

ワイパーも役に立たない程の豪雨の中
来た道を戻る

ガードレールと山肌と
風に揺れる木々が
恐怖心を煽る

更に雷まで鳴り始めた

閃光で辺りが昼間の様に鮮明に映る

・・・怖い

バッグを胸に抱き
肩にかかるシートベルトを握りしめる

「柚ちゃん大丈夫？」

「･････。」

「もう少し走ると・・・大きな通りに出るから」

ピカッ

「ぎゃぁぁぁぁぁ」