クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「はい」

素直に頷くとアレクセイ様は満足したように言った。

「他に聞きたい事はあるか?」

「はい。リードルフの収支報告書を見たのですが、税収が減っているようでした。なぜでしょうか?」

今更のように疑問を投げると、アレクセイ様は少し驚いた様だった。

「ラウラは収支報告書が読めるのか?」

「難しいことは分りませんが、少しなら。結婚前の教育であれこれ知識を詰め込まれましたから」

アレクセイ様がまだ王位継承権を持つ第二王子だった頃、王宮から課せられた勉強や、それに加えてお父様から指示された勉強は本当に大変だった。

でも、今になって思えばどんな勉強もこの先の人生で役立つことだと思う。

アレクセイ様は王族ではなくなったけれど、領主夫人として知識が多いに越したことは無いのだから。

「そうか……ラウラが気付いた通り、リードルフからの税収は下がっている。半年前から採掘量が減って来ていて、それに伴い他領へ売る事のできる量も少なくなって来ているからだ」

「それは資源が枯渇してきていると言うことですか?」

そうだとしたら問題だ。

「まだなんとも言えない。それを自らの目で確認するのが視察の目的のひとつだ」

「そうなのですね」

「他にも確認したいことが幾つかあるから忙しい。今回はラウラが同行してくれて助かった」

「同行といっても、リードルフでは別行動の予定が多い……あっ、もしかしてあえてのことなのですか?」

思いついて問うと、アレクセイ様は目元を緩めて頷いた。

「そうだ。ラウラと別行動にすれば、リードルフの要人たちは二手に分かれるし、一般人の注目も二分され動きやすくなるからな」

「人目を気にする調べものってことは、アレクセイ様はリードルフに何か不正があると考えているのですか?」

鉱石の採掘量が減っていることを確認するだけなら、代官のヒルト男爵に正面から問い質せばいい。

それなのにそうしないと言うことは、アレクセイ様はヒルト男爵を信用していないということ?……なんだか心配になってしまうのだけれど……。

「問題が起きているか確認するだけだ。けどラウラが出歩くときは必ず護衛を付けろ」

アレクセイ様は何でもないように気楽な返事をしたけれど、私に釘を刺すことは忘れなかった。
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