クールな公爵様のゆゆしき恋情2
護衛騎士が一歩下がるのを見届け、それから再びルカに目を向けた。

「待たせてしまってごめんなさい、先ほどの話の続きをさせてね」

ルカは少し落ち着いたのか、こくりと頷く。

「危険が分かっていながら馬車を停めたのはなぜ?」

「どうしても伝えなくちゃいけないことが有ったから。普通に話しけようともしたけど、俺達はお姫様に直接話しかけちゃいけないってシスター達に言われていて、近付けもしなかった」

「シスター達? あなたはリンブルク孤児院にいたの?」

「そう……俺は公爵夫人が来たとき広場にいた。でも護衛が沢山いるし、院長も直ぐに来たからなかなか近寄れなかった。だからここで待ち伏せして馬車を停めたんだ。ここはリンブルクから領主館に行くのに必ず通る道だし、道幅が細くて速度を落とすから、馬車を停めるのに向いていると思った」

顔には出さなかったけれど、私は内心少し驚いていた。

この男の子は、勢いだけで馬車を停めた訳ではないのだと気付いたから。

私が通る道を予想して、先回りして一番危険が少ない場所を選んで実行したのだ。

「事情は分ったわ。あなたなりに考えて行動したのね、でも妹を連れて来たのは駄目だわ」

私の指摘に、少年は悔しそうな顔をして言う。

「それは分かってる。でも妹が居なかったら、護衛に問答無用で切られるかもしれないと思ったから」

「……そこまで考えていたの?」


さっきも感じたけど、この少年は年の割りに用意周到だ。世間知らずでもない。

この子が私に何を訴えたいのか、ますます気になって来た。

「話を聞くわ」

この子に子供に対する一般的なお説教は無意味だと感じ、私は本題を促した。

少年は私の意図を察したのか、黒い瞳でしっかり私を見据えながら話始めた。
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