クールな公爵様のゆゆしき恋情2
領主館に戻った私を、馬車寄席で待ち構えていたアレクセイ様が出迎えた。

私の帰りが予定より遅れたため、かなり心配させてしまったようだ。

「遅かったな、何かあったのか?」

アレクセイ様は、私と背後に立つ騎士に向けて言う。

「心配かけてごめんなさい。思いがけないことがあり遅くなってしまいました。詳しくは部屋で説明します」

他の者から事務的な報告をされる前に、私の口から事情を説明したくて、アレクセイ様を部屋に促す。

「ああ」

アレクセイ様は戸惑った様子を見せながらも、私が腕を引くのに任せて付いて来てくれる。
だけど、騎士に「お前からも後で報告を上げろ」と鋭く命令を飛ばすことは忘れなかった。




滞在している部屋に戻り、人払いをしてから横並びでソファーに腰掛ける。

「それで、何があったんだ?」

「はい、実は……」

私は、先ほど見聞きしたリンブルグ孤児院の現状を、詳細に語った。


「あのリンブルグで? まさか……」

話を聞き終えたアレクセイ様が、怪訝な顔をして呟く。

「アレクセイ様は、リンブルグ孤児院を訪問されたことがあるのですか?」

「いや、無い。だがこのリードルフ最大の孤児院として話は聞いている」

「どのように聞いているのですか?」

「歴史ある孤児院で、子供達を独り立ちするまでしっかりと面倒見ていると。採掘場の労働者のうち、リンブルグ孤児院出身の者がかなりの人数にのぼる。だがラウラの言っていたような問題の報告を受けた事はない」

アレクセイ様は、その報告にかなりの信用を置いているようだ。
どちらかと言えば、私の話の方を信じられないでいる様子。

「その報告はどなたから?」

答えを予想しながらも聞いてみる。
アレクセイ様は一瞬躊躇いながらも答えてくれた。

「ヘルミーネだ」

やっぱり……思った通りだ。
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