クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「あなたも聞いていたのですね」
「はい。直ぐにでも止めようとしたのですが、ラウラ様が事を大きくしたくないご様子でしたので、まずはお詫びをと思いまして」
ヘルミーネ様は腰を折ったまま、淡々と告げてくる。
「ヘルミーネ様、顔を上げてください。私は気にしていませんから」
私の言葉に、ヘルミーネ様の肩がぴくりと反応した。
「……気になさらない?」
「ええ。驚きはしたけど大丈夫です。アレクセイ様にも言ったりはしませんから」
ヘルミーネ様は、フェルザー家よりこのリードルフ地方を任せられたヒルト男爵家の者として、責任を感じているのだろうと思った。
だから彼女の気を楽にしてあげたくてそう言ったのだけれど、ゆっくりと顔を上げたヘルミーネ様は安心しているどころか、少し怒っているように見えた。
「……どうしたのですか?」
彼女がなぜ機嫌を悪くするのか分らない。
戸惑う私に、ヘルミーネ様が少し低い声で言った。
「いえ……この度は本当に申し訳御座いませんでした」
ヘルミーネ様は間違いなく私に何か言いたいはずなのに、それを言おうとしない。
アレクセイ様に遠慮しているから?
でも、このままで終わらせては、気になって仕方ない。
「私に何か話があるのでしょう? 遠慮しなくていいから、はっきり言って欲しい。気になってしまうもの」
穏やかに言うと、ヘルミーネ様は「分かりました」と言い、顔を上げた。
「少しは気にして頂きたいです」
「え?」
どういう意味?
ヘルミーネ様は、私の目を真っ直ぐ見つめて来る。
「部下達の無礼については大変申し訳なく思っています。口にして良い事では有りませんでした。ですが、あの者達が申した事は皆が感じていることです」
「……皆が感じていること?」
鸚鵡返しにする私に、ヘルミーネ様は射るような視線を向けてくる。