クールな公爵様のゆゆしき恋情2
会食の席にも、ヘルミーネ様は当然のように参加した。

他の代官の令嬢は不参加というくらいだから、ヘルミーネ様も不参加かもしれないと思ったけれど、ヒルト家においての彼女の立場は、令嬢ではなく女主人とも言えるもので、皆がそれを認めていた。

場を仕切るその存在感は際立っている。

比べて私はフェルザー公爵夫人とは名ばかりで、ただのアレクセイ様の付属品。
または、アンテス辺境伯家の姫としての印象しかないようで、気を遣ってくれているのは感じるけれど、決して認められてはいない。

そんな自分の立場をまざまざと感じさせられる会食だった。


時間が経ちお酒の席になったので、私はひとり退室することになった。

アレクセイ様はもう少し皆と話をするとのことで、先に休んでいるようにと言われたからだ。

どうして私だけ? ヘルミーネ様は残る様子なのに……。

そう思ったけれど、周りの代官たちも気を使う存在である私の退室を望んでいるように見えたので、納得いかないながらも従った。


与えられた客間に戻り一人になると、自然と溜息が漏れた。

初めての視察と張り切ってこのリードルフまで来たけれど、思い描いていたものとは違い、憂鬱になることばかりだ。

期待していた通りに物事が進まないからと言って落ち込むなんて我侭だと分かっているけれど、気分が沈むのは停められない。

休む支度を整えて、寝室の灯りを落としてもいろいろ考え込んでしまっているせいか、なかなか眠気が襲ってこない。今日は慣れないことの連続で疲れているはずなのに……。


どれくらいの時間が経ったのか、依然として眠れずベッドの中で寝返りをうっていると、静かに扉を開く音が聞こえて来た。
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