強引ドクターの蜜恋処方箋
「はいはい、みんな仕事に戻ってー!」

婦長はパン!と手を叩くと、呆然と立ちつくしている看護師達を散らし始めた。

そして、私と目が合うと、笑いながら軽くウィンクをした。

顔が熱い。まだ夢の中にいるようだった。

「チナツ」

エレベーターの方に視線を向けたままの雄馬さんが私の名前を呼んだ。

「チナツが言ってた通りだったな。親父はちゃんとわかってくれた」

そう言うと、肩と腕が触れあった状態で私の手をそっと握った。

そして、私に視線を向けると、

「幸せになろうな」

と周りに聞こえないように優しい声で言った。

私は黙ったまま頷いた。

「チナツさん、これ」

雄馬さんと反対側にいたユウヒが私にハンカチを手渡した。

「幸せになって下さいね」

ユウヒから震える手でハンカチを受け取ると、「ありがとう」と言っていつの間にか頬に伝っていた涙を拭いた。


それから1週間後、すっかり元気になった松井教授と雄馬さんの3人で食事をとった。

そして、松井教授・・・ではなく雄馬さんのお父さんは、私達の結婚を心から祝福してくれた。







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