また君に恋をする
3人で肩を並べてすぐ近くの入り口まで歩く。
その短い距離の間も、ずっと周りを気にしていた桃。
この時に俺が聞けばよかった。
「何かあるのか」と一言声をかけるだけでよかったのに。
気がついた時には、桃に押されていた。
代わりに頭から血を流した桃が、俺のいた場所で倒れていた。
…何が起こったのかわからなかった。
頭から血を流して目を閉じている桃が、俺の足元にいる。
状況が理解できない。
今、何が起こっているのか。
どうして桃がこんな姿に?
「桃!」
生きてきた中で焦るという感情を抱いたことはなかった。
この時、初めて焦ったと思う。
いつもの余裕は1ミリもない。
「桃!桃!」
世界で一番大切な人の名前を大声で叫んだ。
動かない桃を抱きかかえて、何度も名前を呼ぶ。
頼む。
目を開けてくれ。
指を動かしてくれ。
「春翔!救急車!」
「はい!」
「桃!桃!」