また君に恋をする


3人で肩を並べてすぐ近くの入り口まで歩く。


その短い距離の間も、ずっと周りを気にしていた桃。



この時に俺が聞けばよかった。


「何かあるのか」と一言声をかけるだけでよかったのに。



気がついた時には、桃に押されていた。


代わりに頭から血を流した桃が、俺のいた場所で倒れていた。


…何が起こったのかわからなかった。



頭から血を流して目を閉じている桃が、俺の足元にいる。



状況が理解できない。


今、何が起こっているのか。


どうして桃がこんな姿に?




「桃!」




生きてきた中で焦るという感情を抱いたことはなかった。


この時、初めて焦ったと思う。


いつもの余裕は1ミリもない。




「桃!桃!」




世界で一番大切な人の名前を大声で叫んだ。


動かない桃を抱きかかえて、何度も名前を呼ぶ。



頼む。


目を開けてくれ。


指を動かしてくれ。




「春翔!救急車!」


「はい!」


「桃!桃!」

< 107 / 289 >

この作品をシェア

pagetop