また君に恋をする
「桃さん!」
ドアを開けると同時に聞こえた春翔の声。
ここまで走ってきたことを表す息遣いと荒い声。
「てめぇ!」
春翔は私の上に乗っている男を引き剥がし、思いっきり蹴り上げた。
「うっ」っと鈍い声を吐いた男と、その上に馬乗りになる春翔。
何度も何度も殴った男の顔の原型は、もうないに等しかった。
春翔が来たということは、もうすぐ奏多が来る。
こんな姿、見られたくない。
「…桃、」
私の儚い思いは一瞬で裏切られ、上から彼の声が降ってきた。
ゆっくり目を開けるけど、涙ぐんで前がよく見えない。
だけど、これは私の大好きな人の声。
「遅くなってごめん。」
はだけた浴衣を直したあと、そっと抱きしめてくれる奏多。
泣きだす私の背中を優しく叩いてくれる。