昨日の夢の続きを話そう
お昼は前田さんが心配するからパンとかかじるようにしているが、あれからも食べれない、眠れない日々が続いている。
紙袋を提げてる手首とか、骨が見えそうでいよいよヤバいなって自分でも思うんだけど、どうすることもできない。

ただ、あの一杯のスープの味を思い出すだけで、心が満たされていくような感覚を抱く。

もう一度飲みたい。

変な話なんだけど、あのスープには不思議なパワーがあった。例えるなら、マッチ売りの少女がマッチを擦ったときに火の中に幻想を見たように。
私もあのスープを飲んだとき、おばあちゃんを思い出して、おばあちゃんを感じたような気がして……。

できることなら、もう一度あの懐かしさを感じたい。


「よかったら、その……。無理にとは言わないんですけど、」


勇気を振り絞り、そう切り出した私に、店員さんはきょとんとした顔を向ける。


「あのスープのレシピ、教えてもらえませんか?」


え、っと驚くような間があって、私はその間息を止めていた。

レシピなんて、部外者にそうそう教えられるもんじゃないよね。企業秘密とかもあるだろうし。
それにこちらの店員さんは、恐らくホールの方で調理担当ではないだろう。こんなこと聞いても分かんないよなぁ……。

言ったそばから、そんな後悔の念にさいなまれていると。


「いいですよ。あれ、まかないなんです。ベジブロスを使ってます」


私の心配をいっぺんに打ち消すように、店員さんはさらりと言った。


「ベジブロス、って。なんですか?」


間の抜けた声で私は言った。

だって、あまり料理はしないから耳慣れないし、第一こんなにすんなり教えてくれたことに、心底驚いている。
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