昨日の夢の続きを話そう
「あーあ……」


楽しみにしてたのにな……。絶対に今日飲めるって思ってたのに。

ベジブロスは冷蔵庫に入れれば、二、三日は持つって砂岡くんが言ってた。明日スーパーでコンソメを買って作ってみよう。
切ろうとしていたベーコンを冷蔵庫に仕舞って、私は溜め息を吐いた。


「明日までお預け、か」


独り言を呟いて、居間の座椅子にぺたりと座る。日中はあんなに温かかったのに、日が暮れると冷えてきた。身震いがする。
炬燵布団、どこに仕舞ってたかな……。

手芸が得意だったおばあちゃんは去年の秋、腹巻きと靴下を編んでくれて、新しい丹前と布団カバーを縫ってくれた。
それはおばあちゃんの分は、なかった。
私の分だけ、新しくしてくれた。

今思えば、そのときは病状が悪くなってたから大変だっただろう。おばあちゃんの優しさを思うと、すごく切ない。

もっと一緒にいたかった。
料理のレシピとか、もっとちゃんと聞いとくんだったな……。

のそりと立ち上がり、私は床の間の隣の押入れを開けた。


「あ……」


すると私が浸りたかった大好きな思い出ではなく、苦しくて辛い記憶が視界を覆った。

ワイシャツ、パジャマ、下着、靴下、それらが入る大きな鞄。
仕事用の資料、本が数冊。

自宅より大学に近いので、島中先生がよくここに泊まるときに使ってた一式が、当然のようにそこに収まっていた。


『こないだ大学の同期と飲んだとき、島中先生が結婚するって大学で噂になってるらしいって聞いてさ〜! 超びっくりしたよ。連絡しようと思ってたんだよ!』


結婚、するんだ。
その名前も知らない女の人と。

来年にはパパなんだ。
私、本当に捨てられたんだ。


「……っ」


そっか。
また私、ひとりになったんだね。


「……っ私だって……っ」


欲しかったな、家族。

言葉にしたら、際限なく虚しくなって。しゃがみ込んでうずくまったまま、しばらく動けなかった。
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