昨日の夢の続きを話そう
「でも私、服が……」
「?」
「車、汚れちゃう」
「なんだ、そんなこと? だったら俺も雨に降られて汚れてるし、気にしない気にしない」


柔和に笑った砂岡くんは、直後に厳しい目でルームミラーを一瞥した。


「ほら、香澄さん、早く。後ろから車が来た」


急かすように言われ「う、うん」私は慌てて助手席側に回り「お、お邪魔します……」言われるがまま乗り込んだ。


知らない人の車に乗ったわけじゃない。素性もばっちり知ってるし。
砂岡くんは行きつけのカフェの店員さんで。私の料理の先生だ。


「家まで送るよ。どの辺?」


ウインカーを上げ、発進させた砂岡くんは目だけでちらりとこちらを見た。


「あ、交番の角を左に曲がって、突き当たりを左に行ったとこなんだけど」
「了解。」
「すいません、お言葉に甘えちゃって」
「全然だよ」


赤信号で停止して、砂岡くんはにこっと笑った。停車したのがちょうど街灯の下だったから、その素敵な笑顔が灯りに照らされてきらきらして見えた。


「香澄さん、ベジスープ作ってみた?」
「うん……でも、失敗しちゃったっていうか、」


言いかけて、私は大事なことを思い出した。


「あ! 私、今日帰りにスーパーでコンソメ買おうと思ってたんだ」
「次、左? 右?」


交番の付近までやって来て、砂岡くんはキョロキョロと左右を目視しながら言った。
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