昨日の夢の続きを話そう
へらへら笑った私は、お代わりをしようと立ち上がり、台所へ向かった。


「砂岡くん、料理すごくお上手なんだね。味ももちろんだけど、動きもてきぱきしてて見てて惚れ惚れしちゃった。厨房でも働けそうだね」


気を取り直すように言って、鍋からお玉でスープを掬い、注いだカップを両手で持って戻ると。


「実家なんだ、あそこ。だからまかないとか、野菜屑分けてあげたりとか、融通が利いた」


それまでとは違う、硬い表情で砂岡くんは言った。


「実家って、どういうこと? あのカフェって、チェーン店だよね。あ、フランチャイズ?」


私はスープをひとくち啜ってから聞いた。


「いや、親父が経営者なんだ。花時計カフェとか、他にも飲食店がいろいろとね。サンドヒルフーズって会社、知ってる?」
「え! 知ってるもなにも、大企業じゃん」


全国に何店舗もある有名なハンバーガーショップとか、ファミレスとか、ドーナツ屋さんとか。
その会社の系列だってことはきっと行ったことがある人なら、メニューに同じ山みたいなマークのロゴが入ってるのを見たことあって知ってると思う。CMとかも流れてるし……。


「砂岡くんはじゃあ、そこのご子息? ってこと?」
「うん。こないだまでは本社で働いてたんだけど」
「継ぐの?」
「いや、あそこで長く働くつもりはない。他にやりたいことがあるんだ」
「ほー、すごいね」


間延びした言い方をした私に対し、砂岡くんは神妙な顔つきだった。


「そんなことより、さ。香澄さん、雪囲い手伝おうか?」


気持ちを切り替えるように勢いよく立ち上がった砂岡くんは、居間から庭に出られる大きな窓の前に立った。
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