昨日の夢の続きを話そう
「雪囲い?」
「うん。去年やらなかったんじゃない? 木がけっこう折れたでしょう。あのさるすべりとか、つつじとか」


私が生まれる前、おじいちゃんが生前大事にしていたという木を指差して、砂岡くんが言った。


「よくわかるね。暗いのに」


私も立ち上がると、彼の隣に歩み寄った。


「お庭の手入れとか、俺ができることあったら手伝うよ。」
「え、でも。そこまでしてもらうのはさすがに悪いわ」


確かに指摘された通り、去年はおばあちゃんのこともあって、庭の手入れなどする余裕もなく、ずっとサボってたから荒れ放題、折れ放題。
今年も冬がやってくると、もっと殺伐とした光景になるんだろうなって、半ば諦めている。


「俺野菜も植物も好きだし、香澄さんは大事な常連さんだし。香澄さんさえよければ、今度の土曜日にでもどう?」
「ど、土曜日って……砂岡くん、仕事は?」
「あそこ、繋ぎっていうか、空いてる時間にヘルプで入ってるんだけど、行ってもどうせ嫌な顔されるし。経営者の息子が手伝ってんじゃ、監視されてるみたいでそりゃあ嫌だよね」
「う……」


どう反応したらいいかわからずに、私は口をつぐんだ。


「それに俺、もうすぐいなくなるし」


庭から目を離し、こちらに向き合った砂岡くんは揺るがない真っ直ぐな目で、私を見つめた。


「あ、もちろんもし、迷惑じゃなかったら、の話なんだけど」
「迷惑だなんて、そんな……」
「じゃあ、雪が降る前に取り掛かろう!」


一際明るい声で言った砂岡くんは、自分が使ったカップを台所にきちんと持っていき、濯いで流し台に置いた。
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