昨日の夢の続きを話そう
でも今回の砂岡くんとの素晴らしいご縁は、私に、おばあちゃんと一緒に暮らし始めた、あの日の希望に満ちた温かい時間を思い起こさせてくれた。
手を真っ黒にしてマリーゴールドを植えたあの日。
私が言ったのはこの花じゃないんだけどなーなんて反抗期な私は膨れながら、それでも笑って、ときどき怒って、ふたりで一緒にお庭を作った。

おばあちゃんと積み重ねた日常は、なにごとにも代え難い宝物だから。
この家で染み付いた香りと温もりを大切にして、人とのご縁を大切にしていこう。

たとえ、ひとりぼっちでも。

そんな風に前向きに思えるようになった原点が、ナスタチウムに詰まってるような気さえした。
文庫本と辞書の間で今、ぺったんこになってる最中のあの、一輪のオレンジ色の花に。

本当に、砂岡くんのおかげだなぁ。
砂岡くんに会っていいなければ、あのスープを飲んでいなければ。今も私は昼夜を忘れて布団に包まっていたかもしれない。

あのスープって、魔法でもかかってるのかな__なんて、非現実的なことを半ば本気で考えていた土曜日。


「おばあちゃん、気に入ってくれるかな。抹茶のシフォンケーキを焼いてみたんだけど」


砂岡くんは本当に、再びうちにやって来た。
手土産まで持って。
< 40 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop