昨日の夢の続きを話そう
「え……抹茶?」
「うん。月曜日に来たとき、抹茶のクッキーがお供えしてあったから」


たたきでスニーカーを脱ぎ、居間に向かって歩きながら砂岡くんが少々不安げに言った。

すごい。彼の気遣いには本当に感心してしまう。


「ありがとう……。大好きなんだ。嬉しいな」


私は頭を下げて、その紙袋を両手で受け取った。


「どうやって作ったの? これ」
「えっとまず、小豆を炊いて」
「そ、そこから? すごいね。まさか、抹茶は京都に摘みに行った、とかじゃないよね?」
「まさか。でもいいね、それ。時間ができたらやってみる」
「え、えー……」


料理にかける情熱が凄まじい、ってことは、充分に伝わった。
頂いたケーキをお供えして、手を合わせると。


「香澄さんのは、ホイップクリームも作って来たよ。添えて食べるのがおすすめ」


と、砂岡くんは片手を掲げて見せた。
そっちは半透明のビニール袋で、タッパーが入っている。


「すごいっ! 至れり尽くせり! 最近甘いもの食べてなかったから、無性に食べたかったんだよね」


駆け寄って、砂岡くんからビニール袋を受け取った私は、タッパーをぎゅっと抱きしめた。


「こらこら、そんなことすると溶けちゃうよ。ていうか香澄さん、なんかこないだより顔色が良くなったね」
「ほんと? へへ」


それはきっとすべて、砂岡くんに出会えたからだ。

私からホイップクリームを取り上げると、砂岡くんは冷蔵庫に仕舞い、ぱたりと扉を閉めた。


「雪囲いに使う板を車から下ろすから、そのまま庭の方に回るね」
< 41 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop