昨日の夢の続きを話そう
回れ右をして、玄関の方にまた戻る砂岡くんは最後にさりげなくがらんどうとした押入れを見たけれど、特になにも言わなかった。

私も砂岡くんの車のトランクから板を下ろすのを手伝った。
いつも庭の手入れはおばあちゃんがやってて、私は詳しくはないんだけど、雪囲いって大体木材や、ベニヤ板や、むしろを使うと思うんだけど、砂岡くんが持って来てくれたのは白くて薄い板だった。
知り合いの大工さんに譲ってもらったのだという。

脚立も持参して来た砂岡くんは、予想を遥かに上回る器用さで、料理を作ってるときと同じようにとても手際よくロープを捌いて木を囲っていった。
私は足手まといになりそうなのでほとんど手出しできなかったんだけど、おかげで枯葉を拾って掃除したり、網戸を拭いたり、ずっとサボってた庭仕事に没頭できた。


「ふう。完成」


額の汗を拭った砂岡くんは、居間に繋がる窓の前に立って庭を見渡した。


「お疲れさま」


窓越しに、私は冷えた麦茶を渡す。
サンダルに爪先を引っ掛けて庭に出ると、「ありがと」とグラスを受け取った砂岡くんの腕を不意に見た。

今日の作業を見て驚いたのは、その職人さんのような手際の良さだけではない。意外と体つきががっしりしている、ということ。
背が高く、割と細身で一見モデル体型なんだけど、軽々と板を持ち上げる肩は思いのほか大きくて、よくよく見ると胸板も厚め。

体、鍛えてるのかなぁ。


「香澄さん? どうしたの、ぼーっとして」


不覚にも若い子の体に見入っていた私は、なんだか恥ずかしすぎて、くすくす笑ってしまった。
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