昨日の夢の続きを話そう
私が慌てて説明すると、亜美はコマ送りみたいなぎこちない動きで、私に目配せをした。
その鋭い目力には、〝誰、この人。どういう関係? 説明しなさいよ!〟っていう言葉が隠されているに違いない。

どう説明したらいいものか……。
話すと長くなるんだよなあ、と迷っていると。


「それ……」砂岡くんが指差したのは、亜美が持っていた紙袋だった。「お買い上げありがとうございます」


「えっ、お買い上げって、どういうこと……?」


怪訝そうな顔をした亜美に、砂岡くんが花時計カフェで働いていることを教えると、昔から花時計カフェの大ファンの亜美はすぐに心を許したらしい。

私たちはあれこれ話しながら居間で四人でピザを食べて、砂岡くんが作ってきてくれたシフォンケーキもいただいた。
亜美は作り方を聞いて、メモしていた。海斗くんがとっても気に入って、大人の分まで平らげたからだ。横取りされた亜美は、大人げなくむくれてたけど。

こんなに賑やかな居間は、珍しい。うちが笑顔と笑い声に包まれるなんて、久しぶりだ。
きっとおばあちゃんも写真の中で、微笑ましく思っただろうな。

食後に亜美と食器を洗った。
砂岡くんと海斗くんは、庭で虫を探している。


「でも良かった。元気そうで」


私が濯いだ食器の水滴を布巾で拭いて、亜美が穏やかな声で言った。


「新しい、いい出会いもあったしね!」


ちらちらと庭の方を盗み見ながら、口角をクイッと上げる。


「海斗ってば、すっごく懐いてるし。砂岡くん、いい人だね。優しい彼氏って感じ」
「彼氏、って……。砂岡くんは、そういうんじゃないよ」
「え、そうなの? てっきりふたりはいい感じなんだと思ったけど」
「ううん。私もさっきの亜美みたいに、料理のこととかいろいろ聞いたりしててね」
「っていうきっかけで、恋が芽生えるっていうね! あるある! だってもう言葉を失うくらいすっごくイケメンだし! 初めに見たときびっくりして腰抜かすかと思ったよ」
「だから。違うってば……」
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