一途な小説家の初恋独占契約
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ジョーが迷いなくタクシーに目的地を告げたので、特に疑問にも思わず着いてきた先は、都心からは少し外れた、私の家にも程近いレストランだった。
「あれ……ここのお店、どこかで聞いたことがある」
ジョーが住所で説明していたので、お店の間近になって分かった店名は、聞き覚えのあるものだった。
「そりゃ、お客さん、ここは三ツ星レストランなんでしょ? 何ヶ月も前から予約しないといけないんだって、前に乗せたお客さんが自慢してたよ」
ジョーの代わりに、運転手さんが教えてくれる。
「それが、今日はたまたまキャンセルが出たそうですよ」
とんでもないことをジョーがサラリと言って、タクシーから連れ出した。
「前から予約してたの?」
「いや、ついさっき。直前でキャンセルが出たらしいよ」
私が試着している間に、カード会社のコンシェルジュに電話して、予約したらしい。
適当なお店を予約するよう頼んだら、ここはどうかと薦められたのだと言う。
適当なお店で、三ツ星レストラン……?
それで、洋服も選んだのかもしれない。
ワンピースを着せてもらったことに、ホッとする。
いつものパンツスーツじゃ、気後れしてしまったに違いない。
慣れない場所におどおどとする私に気づき、ジョーは店内に入る前に足を止めた。
「汐璃、フレンチは好きじゃない?」
「そんなことないよ。ただ、こんなに良いお店に来たことがないから、戸惑っているだけ」
「さっきのドライバーが三ツ星なんて言ってたから、緊張しちゃってるのかな。窮屈なお店じゃなく、大切な人とくつろいで美味しいものを食べたいんだってリクエストしたから、きっと大丈夫だよ」
私の右手を取り、自分の左肘の辺りに掛けさせる。
「アメリカだったら、知っているお店にエスコートできるんだけどね。人任せの僕を許してくれる?」
「当たり前でしょ。素敵なお店に連れてきてくれて、どうもありがとう」