一途な小説家の初恋独占契約
その大作家が、私の目の前で一緒に食事をしている。
予約の取れない人気レストランに、電話一本で席を作り、私に日本一おいしいものを食べさせたいと言ってくれた。
さすがに一流レストランだけあって、ここで働いている人たちは不躾な視線を送らないけれど、一歩外に出れば、きっとまた注目を浴びるほど整った容姿。
写真一枚で、日本中の関心を集めてしまった。
そんな人が、食事を始めて二時間余り、ひたすらに優しく私を見つめてくれている。
私の話に耳を傾け、低い美しい声で囁くように語りかけてくれる。
きっと、ジョーに立ち向かうなんて、無謀だったんだ。
「ジョーって……かっこいいよね」
「……何を突然」
食事も終わり、赤ワインを口を運んでいたジョーは、グラスをテーブルに戻す直前でピタリと動きを止め、しばらくした後に残りを一気に飲み干してしまった。
さっきまで、戸惑うほど執拗に私を見てきたくせに、目が合わない。
「ジョーこそ、なんで照れてるの。言われ慣れてるんでしょ。今日だけで、一体何回言われた?」
「いや、まあ……ファンの人たちが言うのは、お世辞だと思うけど……聞かれてたわけだから、否定はしないでおくけど……汐璃に言われるのは全然別」
「え」
「同じなわけがないよ。全然違う」
妙にキッパリと言い切ったジョーは、空になったグラスを諦め、今度はお水の入ったグラスも空けてしまった。
「……ちょっと待って。僕、かっこいいの? それ、褒めてくれてるんだよね?」
「いや、客観的に見て、物凄く整ってるからこんなことになってるんだよ?」
「汐璃の主観で答えて」
「私に、何度『素敵だ』って言わせた?」
「うん、言わせた自覚があるから」
デセールを待つテーブルは、空だ。
私にも逃げ場がない。
それに、今夜はもう、逃げなくて良い気がしていた。
予約の取れない人気レストランに、電話一本で席を作り、私に日本一おいしいものを食べさせたいと言ってくれた。
さすがに一流レストランだけあって、ここで働いている人たちは不躾な視線を送らないけれど、一歩外に出れば、きっとまた注目を浴びるほど整った容姿。
写真一枚で、日本中の関心を集めてしまった。
そんな人が、食事を始めて二時間余り、ひたすらに優しく私を見つめてくれている。
私の話に耳を傾け、低い美しい声で囁くように語りかけてくれる。
きっと、ジョーに立ち向かうなんて、無謀だったんだ。
「ジョーって……かっこいいよね」
「……何を突然」
食事も終わり、赤ワインを口を運んでいたジョーは、グラスをテーブルに戻す直前でピタリと動きを止め、しばらくした後に残りを一気に飲み干してしまった。
さっきまで、戸惑うほど執拗に私を見てきたくせに、目が合わない。
「ジョーこそ、なんで照れてるの。言われ慣れてるんでしょ。今日だけで、一体何回言われた?」
「いや、まあ……ファンの人たちが言うのは、お世辞だと思うけど……聞かれてたわけだから、否定はしないでおくけど……汐璃に言われるのは全然別」
「え」
「同じなわけがないよ。全然違う」
妙にキッパリと言い切ったジョーは、空になったグラスを諦め、今度はお水の入ったグラスも空けてしまった。
「……ちょっと待って。僕、かっこいいの? それ、褒めてくれてるんだよね?」
「いや、客観的に見て、物凄く整ってるからこんなことになってるんだよ?」
「汐璃の主観で答えて」
「私に、何度『素敵だ』って言わせた?」
「うん、言わせた自覚があるから」
デセールを待つテーブルは、空だ。
私にも逃げ場がない。
それに、今夜はもう、逃げなくて良い気がしていた。