サンタは三人いる
耳元で囁かれていた唇が少しだけ離れたと思った瞬間、いきなり首筋に吸い付かれて、色気も何も無い残念な声が出た。



「これさ、胸元開きすぎじゃないか?誰の趣味?……お前の所のオーナーってエロオヤジなの?」



確かに、衣装はオーナーの提案で間違って無いけど……



オーナーは決してエロオヤジではない。チーフパティシエの齋藤さんの奥さんだ。



私に投げ掛けられる言葉と同じく刺を孕んだ唇が、痛みを伴いながら首筋を辿り、次々と着地していく。



やがてその唇は、抵抗できないまま震えている私の唇にたどり着いてゆっくりと重なった。




ーー私…………キス、してる?





状況を理解するだけで精一杯で、全く感情が追い付いて来てくれない。
 


本当は抵抗しなくちゃいけないんだろうけど……



だけど、ゆっくりと確実に私の中に浸食していく、このゾクゾクと震えるような感覚に抗うすべを私は知らなかった。



固く引き結んだ唇を、ぐいっと舌が押し広げる感触がした瞬間ーー



『ピンボーン』



緊迫した空気に似合わない、間延びしたチャイムの音がリビングに鳴り響いた。
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