素敵な王子様の育てかた。
本当に理解できないでいた。
いきなりなにを言い出すのだろう、このひとは。

まんざらでもなかったって、なにが?
嬉しそうって、誰だって褒められたら悪い気はしないでしょう?

それが例え社交辞令のものだとしても、素直に受け取るべきでしょう?

……それに。


「あまり自分を卑下するようなお言葉はお控え下さい。確かに王子にはできないこともあるかもしれない。でも、逆もまたあるのだとお忘れにならないで。その考えがまた、閉ざされた世界に戻る原因になるということを、肝に銘じておいて下さいませ」

人にはそれぞれいいところもあれば、ダメな部分もある。
もちろん、できることもできないことも、人それぞれだ。

それに対し、羨ましいと思う感情を持つのは当たり前のことだから構わない。

けれど、それを僻んで自分を卑下し投げやりになるような考えを持つなら、話は別だ。

卑下していいことなんて、なにもない。
向上心も努力もすべてを無にしてしまうから。


「……ごめん」

王子はそれだけ言い、私から視線を外す。

始めは私が偉そうなことを言ってしまったから、苛立ってしまったのかと思ったが、王子の表情を見るに、自身の後ろ向きな発言に対して、自責の念に駆られているようだった。

すぐに気づき、反省するのであれば問題はない。
けれど、あのような発言が出るのは、きっと王子自身の気持ちが昂っているからなのだろう。


「……少し冷静になったほうがよろしいかもしれません。私は片付けが残っておりますので、一旦これで失礼致します」

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