素敵な王子様の育てかた。
私は王子にそう告げると、部屋を出た。
なるべく平静を保ち王子に告げたつもりが、部屋を出るなりバクバクと心臓が激しく脈打ち始めた。
息が荒くなり、整えるために少し歩いた場所で歩みを止め、壁に寄りかかる。
冷静にならなければならないのは、私も一緒だった。
王子はなぜ、あんなことをいきなり言い出したのだろう。
あの態度に、あの発言。
あれはまるで――……。
私は頭を左右に振った。
その先の考えを、払拭するように。
まさか。
そんなはずはない。
あの王子が、私のことなんてなにも思っていないはず。
だって彼はこの国の王子で、私は伯爵令嬢でも王子からしたら身分の低い貴族であり、そして王子の侍女。
それ以上もそれ以下もない。
それに王子には、じきに相応しい女性が嫁ぐことになる。
容姿も身分も劣ることのない、素晴らしい女性が。
王子だって、いずれそうなることを薄々気づいているはずだ。
それも含めて分かっていて、王子は立ち直っていく決意をしたのだろうから。
「……っ」
胸が苦しい。
この締めつけられるような苦しみを、どうかもう私に与えないで。
どうかもう私を惑わすのはやめて。
私は侍女。ライト王子付きの侍女。
ただそれだけの存在なのだから――……。