素敵な王子様の育てかた。
***

翌日、早速王子は王妃様に呼ばれ、ひとり王妃様の元へ向かった。
王子を呼んだ理由はもちろん、夜会への参加の件だろう。

なにも知らない王子は、部屋を出る前いつもと変わらぬ態度で私に声を掛けて行った。

私も表情に出さまいと、普段通りに接して送り出したが、内心複雑な思いだった。
そして相変わらず、ちくりと胸も痛んだ。

それから部屋の掃除をしたり、シーツの交換や洗濯などをこなしながら、主の帰りを待つ。


王子がここに戻って来た時、どんな表情で戻ってくるのだろう。

外に出られるようになったものの、夜会のように大人数が集まる催しに参加するのは、初めてのこと。
きっと王子は、開口一番参加したくないと漏らすはずだ。

しかしどんなに王子が難色を示しても、私は王子を参加させるように説得しなければならない。

それが王妃様との約束だから。

……でも。

「はあ……」

思わずため息が零れる。

説得なんて、できるのかしら。
それよりも、こんな気持ちになってしまうのは、なぜ?


言えない。
ではなく、言いたくないという気持ちが強かった。

自分の立場はちゃんとわきまえているのに。
分かっているのに。

でもなぜ?


"できることなら、参加して欲しくない"


そう思ってしまうのは、どうしてなの……?

< 140 / 190 >

この作品をシェア

pagetop