王子様とハナコさんと鼓星


「はい。少しだけ。ドラマとか漫画では…」

「ははっ、また出た。ドラマと漫画。そういう政略的な結婚もあるとは思うけど、俺は嫌だから」

「そう、ですか。歓迎されてホッとしましたよ…って、え?」


少しあけた距離を埋めるように社長が自然な流れで近寄って来た。片脚は完全に社長の片脚と触れ合っている。今までで1番近い。


(なんで、近寄って来たんだろう。しかも自然過ぎて気付かなかった)


でも、離れるわけにはいかないよね。社長に失礼だし。別に、いやらしい事をされているわけでもない。緊張で身体を硬くしながらハーブティーを飲む。


「それ、美味しい?」

「はい。ハーブ系は好きです。社長は苦手ですか?全然飲んでませんけど」

「好きだよ。それより、名前が戻ってるよ。2人の時は名前って約束」


(そ、そうだった。つい…)

「ごめんなさい。慣れなくて…気をつけますね。凛太朗さん」


ハーブティーを置いて、コクリと頷く。


これから気をつけないと。気を抜いたら社長って呼んじゃうから。

.
< 128 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop