王子様とハナコさんと鼓星


「パスポートはありますけど…たぶん期限が切れてます。名前とか住所も変えないといけないので、申請しておきます」


「お願いします。あ、食べていい?」

「はい。いただきます」

「いただきます。あ…これ、 美味しい」


少し作り過ぎたと思った朝ごはん。凛太朗さんは全て美味しいと何度も褒めて食べてくれた。


どれもレシピを見たものだと言っても、技術や才能があるとか盛り付けや野菜の切り方が綺麗だとか。べた褒めされ、嬉しいような恥ずかしいような、どこか嘘っぽさも感じながらご飯を食べた。






「じゃあ、先に行くけど…本当にバスで行くの?」


朝ごはんを終え、ホテルに向かう凛太朗さんを見送るために玄関について行く。靴べらで靴を履く彼にバックを渡すと、それを不満げな表情で受け取った。


「はい。10分で着きますから大丈夫です」

「うん…」


ご飯を食べている時、マンションを出る時間が重なるから一緒に行こうか?と、言う凛太朗さんの提案を断った。


まだ、支配人達以外に結婚の事は知られていない。もし、仮に一緒に車から降りた所を見られたりしたら面倒。だから、凛太朗さんには申し訳ないけれど、バスで行くと言ったのがどうやら気に入らなかったよう。
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