王子様とハナコさんと鼓星


***

「はい。入って」

「はい。ありがとうございます」

マンションの地下駐車場に到着すると、凛太朗さんはドアを開け降りるのを手伝ってくれた。


パスコードを入力して地下の扉を開け、エレベーターに乗り込み目的の階で降りる。


部屋の鍵も開けて中に促されお礼を言ってから入る。壁に手をついて座り込み、靴を脱ごうと脚を曲げて手を伸ばすとピリっと痛みが走った。

「いった」

(歩いていた時や座っていた時はよく分からなかったけど、身体や脚を曲げる痛いかも)

脚をさすり、痛みを堪えてまた手を伸ばすとそれを見ていた凛太朗さんがしゃがみ込み私の靴に手を伸ばした。


「ほら、脱がせてあげる。無理をしないで頼ってよ。俺たちはもう夫婦なんだからさ」

「あっ…ありがとう、ございます」


足に指先が触れる。男の人に靴を脱がせてもらうなんて、初めて。

(照れるかも…)

右、左と靴を脱がせるとスリッパを置く。

差し出された手を借りて立ち上がると、ふと、玄関に見慣れない靴。

凛太朗さんの靴かな?家を出る時はなかったのに。そう思い彼の手に引かれてリビングに向かえば明かりがついていた。
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