王子様とハナコさんと鼓星


「あれ?ごめんなさい。私、電気を消し忘れたみたいですね」

「ん?あぁ、違うよ」

ドアノブに手を掛けて扉を開けると、部屋の中には針谷さんの姿があった。


「おかえりなさいませ」

アイランドキッチンの方から顔を覗かせる。

「ただいま。華子、テーブルに座って」

「は、はい」

(針谷さんだ…)

椅子を引いて、腰を下ろすと向かいにいる針谷さんと目が合った。


「お怪我の具合はどうですか?」

「はい。だ、大丈夫です。えっと、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「お気になさらず。警察から電話があった時は驚きましたけど、大事に至らなくて良かったです。あ、今更ですがお邪魔させて頂いてます」

「は、はい」

「実は華子から電話を貰った時、会議中だったんだ」

いつの間にかスーツから私服に着替え、私の隣に座った。脚を組み、片手で頬杖をついて私達を交互に見る。

「そうだったんですか?え、あの…ごめんなさい。そんな大事な時に…とうしよう」


「終わり頃だったから。でも、荷物とか置いて来たから針谷に頼んで持って来て貰ったんだ」


「そう、ですか?針谷さんありがとうございます」

「いえ。ついでにご飯の用意を頼まれたのでキッチンをお借りしました」


(そう言われれば、さっきから物凄くいい匂いがする)

「食べられる?お腹空いてるかと思って頼んだんだ」

「はい。せっかくなので、頂きます」

手伝おうとテーブルに手をついて立つと、凛太朗さんが肩に手を回してそれを制す。「座ってて」と言われてしまい、大人しく座っていた。

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