王子様とハナコさんと鼓星
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「ごめんなさい。凛太朗さんにこんな事まで…」
「全然。大歓迎だよ」
お風呂を出てから身体を拭き着替えたまでは不自由ながらも1人で出来た。だけど、鏡の前に座りドライヤーで髪の毛を乾かそうとした所、手を思うように動かせなかった。
恥を承知でリビングに戻りドライヤーを持っていて欲しいとお願いをしたんだけど…
2つ返事で了承してくれたのに、何故かこの人はドライヤーとくしを持ち私の髪の毛を乾かし始めた。
流されるまま抵抗も出来なくて、大人しく鏡の前に座り楽しそうに微笑みながら髪の毛を乾かす彼を鏡越しで見ながらそう言う。
「女の子の髪の毛を乾かすなんて、初めて」
「そう、ですか。お上手ですよ」
凛太朗さんの手つきはまるで美容師のよう。ブローも上手い。本当に何でも出来るんだから。
「そんな事ないよ。でも、なんか楽しい」
そう言いながらひたすら手を動かし乾かし終えると丁寧に髪型を整える。
「ありがとうございます」
「ううん。温かいもの淹れるから飲んで今日はもう寝よう」
リビングに戻るとソファーに腰かける。キッチンから待って来たマグカップを差し出され受け取ると中にはココアが入っていた。