王子様とハナコさんと鼓星

「睡眠前に良いって聞いたから」

「ありがとうございます」

一口飲むとほのかに甘い味が口の中に広がった。だけど、隣に座る凛太朗さんからはコーヒーの香りがする。

「夜にコーヒーを飲んで大丈夫ですか?」

「ん?あぁ…これから少し仕事をしようと思って」

ソファー向かいのローテーブルの上には白いノートパソコン。

(それって、私のせいだよね…)

「お疲れ様です。お忙しいのに」

「ごめんはもう言わない」

「うっ」

言おうとした言葉を遮られる。

「大事な奥さんなんだから、いいんだよ。まだ日は浅いけど、俺は華子の事を大切にしたいと思う。だから、遠慮なんてしなくていいし、信用して頼って欲しいな」


コーヒーを飲みテーブルに置き、いつものように背もたれに手を置いて微笑んだ。

僅かに頬が赤いのは気のせいかな。いや、きっと赤いのは私も同じ。


凛太朗さんと同じようにマグカップをテーブルに置いて私の方から距離を詰める。

.
< 192 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop