王子様とハナコさんと鼓星
「睡眠前に良いって聞いたから」
「ありがとうございます」
一口飲むとほのかに甘い味が口の中に広がった。だけど、隣に座る凛太朗さんからはコーヒーの香りがする。
「夜にコーヒーを飲んで大丈夫ですか?」
「ん?あぁ…これから少し仕事をしようと思って」
ソファー向かいのローテーブルの上には白いノートパソコン。
(それって、私のせいだよね…)
「お疲れ様です。お忙しいのに」
「ごめんはもう言わない」
「うっ」
言おうとした言葉を遮られる。
「大事な奥さんなんだから、いいんだよ。まだ日は浅いけど、俺は華子の事を大切にしたいと思う。だから、遠慮なんてしなくていいし、信用して頼って欲しいな」
コーヒーを飲みテーブルに置き、いつものように背もたれに手を置いて微笑んだ。
僅かに頬が赤いのは気のせいかな。いや、きっと赤いのは私も同じ。
凛太朗さんと同じようにマグカップをテーブルに置いて私の方から距離を詰める。
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