王子様とハナコさんと鼓星
身体を近づけ、凛太朗さんの肩に寄りかかった。
「はい。ありがとうございます」
「そうそう。なんて、簡単にはいかないだろうからまずは努力をするって事で」
コツンと私の頭に凛太朗さんも頭を乗せ、手を優しく握る。
「どんな些細な事でもいい、なんでも話して。俺も華子に何でも話すから」
はい。と、返事をすると凛太朗さんは「大丈夫かな。また遠慮しそう」なんて言いながら笑う。
初めの頃、凛太朗さんと関わりを持った時この人の事は面倒な人だと思っていた。
こっちは話しかけて欲しくないのに、いつも帽子を奪い笑顔で声を掛けて来る。
関わりたくない人のナンバースリーくらいだったのに。まさか、結婚をして、こんなにも大切にしてくれるなんて思ってもいなかった。
王子様のような言葉使いとは反対に、かなり強引な所もあるけれど、その中には私を気遣う優しさがある。
そっと、手を伸ばし胸元の服を握りしめる。
(ドキドキしてる…)
その鼓動の音に耳を済ますため、そっと目を閉じた。